足先の冷えはどのように対処すべき? スキー場でもできる対策方法

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スキー・スノボ豆知識

「足先の冷え」は、手指の冷えと並ぶスキーヤー&スノーボーダーの多くが抱える悩みではないでしょうか。気温の低い厳冬期ばかりだけでなく、春先に滑りに行っても十分起こり得る可能性だってあるのです。

足先が冷えると、スキーやスノーボードの操作が思い通りにいかなくなるばかりか、痛みや痺れを起こし、我慢してそのまま放っておくと最悪凍傷にもなりかねません。足先を冷やさないよう、服装や装備などに十分気を配っておくことが大切です。
本記事では足先の冷えの原因を探り、その対策を紹介します。スキーやスノーボードを前提にしていますが、日頃から冷え症に悩んでいる方も大いに参考にしてくださいね!

そもそも足先が冷えてしまうのはなぜ?

女性

足先が冷える理由は寒いからではありますが、「寒い」から「冷える」、の間にはちゃんと理由があります。ではどうして寒くなると冷えるのか? まず、この単純なメカニズムを理解することからスタートしましょう。

体の血行不良によるもの

熱は血液によって体のすみずみまで運ばれます。しかし、血液を運ぶ力が低下したり、血管が収縮したりすると血液が体の末端まで運ばれにくくなり、その結果、冷えを引き起こします。

とくに足先の血流は、下半身の血液を心臓へと戻す、いわばポンプの役割をするふくらはぎの筋肉量に大きく影響されます。一般的に、女性は男性よりふくらはぎの筋肉量が少ないため、足先の冷えが起こりやすいとされています。

また、血管の収縮は、主に体温調節の指令を出す自律神経の働きが低下することで起こります。極度の緊張で、手指が冷たくなった経験をしたことがあるかと思いますが、それは交感神経が刺激され、自律神経が乱れることによるものなのです。

靴のフィット感によるもの

前述のように熱は血液によって運ばれるので、血液の流れが滞れば熱も運ばれなくなります。そして、血流を滞らせる要因のひとつが「血管の圧迫」です。

血管に外部からの圧力が加わっていると、血液が流れにくくなります。とくにスキーブーツの場合はガッチリと足を固定するために血管も締め付けられやすく、普通のブーツよりは血液が流れにくくなるという状況をつくり出してしまいます。

確かにスキーブーツはよくフィットしたものを選ぶのが基本ですが、足の甲を圧迫しすぎるものは足先の冷えの原因になってしまうでしょう。

また、くるぶしなどがスキーブーツの内側に当たって痛みを感じると、それが自律神経の乱れにもつながっていきます。足の痛みはスキー操作のしやすさにも影響するので、我慢せずに何らかの対処が求められます。

快適に履いていられるスキーブーツの選び方や、快適さをキープする工夫は後述しますので参考にしてください。

足の蒸れによるもの

後述しますが、冷えは外部から体に伝わる温度にも大きく影響されます。スキー(スノボ)のブーツの中で足が汗をかくと、その汗が外気や雪に冷やされて冷たくなり、冷えをさらに助長させます。

気温がそれほど低くならない3月あたりの春スキー(スノボ)などでも、かえって足が汗をかいて靴下を湿らせてしまい、夕方になって気温が下がってくると急に冷えを感じることが起こります。

汗で濡れても保温力の低下が抑えられる、ウールや化学繊維でできた靴下を履くことに加え、濡れたり湿ったりした靴下を履き替えることで、足の蒸れによる冷えをある程度防ぐことができます。

気温や湿度など環境によるもの

スキーやスノボの板が間に入っているとはいえ、ほとんど雪と接しているスキー(スノボ)のブーツは、外気温に加えて雪の冷たさや侵入してくる水(溶けた雪や雨)にさらされています。これも足が冷えてしまうひとつの原因です。

もうひとつ、覚えておいて欲しいのは、体全体の体温低下が足先・指先の冷えにつながるということです。人間の体は、血液の温度が下がると、命に直接関わる臓器を守ることを最優先に、末端の血管を収縮させます。

つまり、足先・指先の冷えは、危険な状態になりつつあるという体からのシグナルともいえるでしょう。体全体を温めることも、足先の冷えを防ぐ方法だということはぜひ知っておいてください。

体質や生活習慣によるもの

スキーやスノボなど雪上スポーツに関係なく、普段から足先・指先の冷えに悩んでいる方も多いここと思います。いわゆる「末端冷え症」で、とくに若い女性にそれが多いとされています。

では、なぜ若い女性に多いのでしょうか。先述のように、ふくらはぎの筋肉量が少ないことや、脂肪が少ないことが理由に挙げられますが、生活習慣によるところも大きいとされています。

とくに食べ物の影響は大きく、普段からジュースや甘い食べ物、インスタント食品などをよく摂取していると、冷えやすい体になってしまうようです。ショウガやニンニク、納豆、味噌、そして冬が旬の食材など、体を温める食べ物を積極的に摂ることをおすすめします。

スキー場でもできる対策方法

足先の冷えの原因を理解したところで、次は対策を考えていきましょう。

日常生活における冷え対策と共通する部分は多くありますが、スキー(スノボ)ブーツを履いた状態ではできないようなこともあります。ここでは現実的な対策をいくつか紹介していきましょう。

ブーツ内での足の冷え対策を行う

先述のとおり、濡れても保温力を失いにくいウールや化学繊維でできた靴下を履くことが、基本中の基本。また、数日間にわたってスキーやスノボを楽しむ場合は、ブーツの内部を乾燥室や室内でしっかり乾かしておくことも大事です。スキーブーツの場合はインナーを取り出しておけば、アウターシェル内に溜まった水も乾いてより効果的です。

ここでは、これらに加えてより積極的な対策を紹介します。

使い捨てカイロを活用する

最も手軽にできる対策は、使い捨てカイロを貼ること。近年は貼るタイプが主流となっており、サイズも豊富かつ安価なので、忘れずに用意しておくことをおすすめします。

ただし、貼る場所にはひと工夫が必要です。

足先を温めるためには、血管を温めることが重要。具体的には膝の裏がベストです。ここを通る動脈を温めることで、足先に温かい血流を送ることができるというわけです。

同時に、首すじや脇の下、お腹にも貼ると効果はさらに上がります。血液は40〜50秒で体を巡るので、太い血管がある場所や血液が集まる場所を温めることで、全身が温まり、足先の冷えも起こりにくくなります。

なお足先が冷たいからといって、足先に直接貼るのは、あまり効果がありません。使い捨てカイロは主に鉄でできていて、酸素と反応して酸化鉄になるときの化学反応を利用して熱を発しています。そのため、密閉されたブーツ内では酸素が十分に取り込めず、十分に発熱できないのです。

また、内側のくるぶしとアキレス腱の間にある太谿(たいけい)というツボを温めるのも、足先の冷え対策に効果があるとされますが、足先同様にブーツ内では使い捨てカイロが温まりにくく、逆にブーツのフィット感を損なうことになるので、あまりおすすめできません。

靴下の重ね履きをする

靴下を2枚重ねて履くのは、昔からよく行なわれてきた足先の冷え対策です。しかし、これにも注意が必要です。普段、靴下1枚でフィットしているスキー(スノボ)ブーツが、重ね履きすることで窮屈になることがあるからです。

足が圧迫されると血流が悪くなるのは先述の通り。これに加えて靴下自体の保温力も、実は期待するほど高くなりません。靴下に限らず、衣類の保温・断熱効果は、主にその衣類が取り込んでいる空気によるものです。

ダウンジャケットが温かいのは、ダウン(羽)の中に入っている空気の保温・断熱効果のおかげなのです。ブーツ内で圧迫された靴下は空気をたくさん取り込めないので、結果、保温・断熱効果が下がるというわけです。

登山の世界で近年、注目されているのは、撥水素材でできた薄手のソックスをインナーに履くこと。汗を外側のソックスに排出し、肌をドライに保ってくれるので、汗による冷えが抑えられます。

ヒーター付きのインソールを使う

より積極的に足を温めるには、電熱ヒーターのついたインソールを使うという手もあります。近年はそのような製品もいろいろ出回るようになってきました。おすすめは、「シダス」などの信頼できるメーカーの製品。市場には安価なものも多数登場していますが、バッテリーの取り付け位置や耐久性などを確認して選ぶ必要があります。

また、現状でフィットしているスキーブーツやスノボブーツの中に電熱ヒーターつきインソールをプラスすると、ブーツ内が窮屈になり、足裏の感覚も損なわれます。滑りを極めたい人は、ほかの対策を検討したほうがいいでしょう。

ブーツカバーを使うのは、対策のひとつです。スキーブーツの上に被せるネオプレン製のカバーで、保温力とともに防水性を高めてくれます。こちらも廉価なものがありますが、多少、値が張っても信頼できるメーカーの製品がおすすめです。

足にフィットするブーツを履く

足によくフィットする快適なブーツを履くことは、スキーやスノボ技術の向上を助けてくれるのはもちろんのこと、足先の冷え対策にもなります。エキスパート、とくにアルペンスキーレースをやっているような人の中には、「快適性よりも操作性!」などと言う人も多いですが、一般のスキーヤーやスノーボーダーにとって快適性はとても重要です。

フィット感が高く、快適なブーツを選ぶには、プロショップを利用するのが一番。まず、自分の技術レベルや筋力、体重に合ったブーツをいくつか選び、それらを実際に履き比べた上で購入しましょう。

プロショップの中には、インナーやアウター、インソールの調整を行なってくれるところがあります。スキーの技術が上がり、スキーブーツにより高いフィット感を求めるようになったら、こうした調整が可能なモデルを手に入れることをおすすめします。

スキーブーツの場合、インナーはジェルを注入したり、熱を加えて足の形に合わせたりするものがあり、フィット感が格段に向上します。そしてアウターは、くるぶしなどが当たって痛い場合に、ブーツ自体を広げたり、内側を少し削ったりする加工が可能です。

インソールを変えてみるのは、もっとも手軽な調整方法です。土踏まずのアーチの高さに合ったインソールを使うと、足の疲れも軽減されます。自分の足に合わせてインナーをつくってくれるショップ・メーカーもあるので、興味があれば一度相談してみるといいでしょう。

血行を促すエクササイズをする

「スキー場でできる」ということから少し離れますが、普段から適度な運動を行ない、血行をよくしておくことは、雪の中での足の冷え防止にも役立ちます。そして、足先の冷え対策には下半身の運動が大切。10分程度のウォーキング、エレベーターなどを使わず階段を利用するなど、日頃から意識して体を動かしているだけでもゲレンデに出かけたときに効果があります。

スキーやスノーボードのために体を鍛えたいという人には、お尻や太もも、ふくらはぎの筋肉を連動させて鍛えることができるスクワットをおすすめします。腕を振って勢いよく行なうのではなく、手を腰に当てるなどしてゆっくりとやってみましょう。

足先の冷え対策を中心に考えるなら、先述した、血流を戻すポンプの役割をするふくらはぎの筋肉を鍛えるのが効果的。立った状態で踵を上げ下げする運動がおすすめです。

より本格的にトレーニングしたいというのであれば、トレーニングジムに通うのもひとつの手。トレーナーに相談して、トレーニング方法を教わるといいでしょう。

ただし、トレーニングマシンに頼りすぎると、スキーやスノボに向いた体づくりは望めません。スキーもスノボもバランスが重要なスポーツ。自然に体のバランスを取りながら鍛えられるスクワットや踵の上げ下げをしっかり行なった上で、足りない部分をトレーニングマシンで鍛えるという方法をおすすめします。

スキー場での体全体の冷え対策

スノボを抱いて怖がる人

体全体が冷える、血液が冷えると、足先や指先などの末端へ血液が運ばれにくくなります。これが凍傷の原因であることは先に述べたとおりです。足先の冷えを防止するには、まず体全体の冷え対策から。足先だけに注目するのではなく、体全体を温めることも意識しましょう。

ここでは、先述の「使い捨てカイロで全身の血液を温める方法」以外に、いくつかの対策を紹介します。

保温効果の高いインナーを着る

体を暖かい状態に保つには、暖かいスキーウェアを着るのが大基本。とはいえ、分厚いジャケット&パンツで着ぐるみ状態になってしまうと、思うように体が動かせなくなってしまいます。

大切なのはインナーウェア。靴下と同様に保温性が高く、汗で湿っても保温性を失いにくいウールや化学繊維でできたものを選びましょう。こちらも靴下同様、肌をドライに保つ撥水生地でできたものがあります。これを、保温性のあるインナーの下に着ておくのもおすすめです。

ホットドリンクを飲む

体を内部から温めるには、高カロリーの食品を摂るのが基本です。ただし、先述の通り、食品には体を温めるものと冷やすものがあるという点に注目すべきでしょう。

スキー場ではホットドリンクで温まるのが手っ取り早い方法といえますが、実はコーヒーや日本茶は体を冷やしやすいともいわれています。好みがあるとは思いますが、体を温めるとされる紅茶や生姜湯、ココアなどがおすすめです。

とくに生姜湯は、お湯に溶かすだけですぐに飲めるパウダーがスーパーマーケットなどでも売られています。このようなものを事前に用意しておくといいでしょう。

暖房施設に移動する

冷え対策で一番大切なのは、「我慢しない」ということ。辛くなったらレストハウスなどで休憩を取り、ストーブやヒーターの近くでしっかり温まりましょう。リラックスして自律神経の乱れを整え、体を落ち着かせるのも冷え対策になります。

足先・指先の冷え対策には、グローブだけでなく、可能であればスキーブーツのインナーやスノボブーツの内部をストーブなどの熱で温めるといいでしょう。湿っていたら、できるだけ乾くようにするのも大切です。

そして、体を温める飲み物を摂って、ゆっくり休憩。十分に冷えから回復し、ゲレンデに繰り出しましょう!

まとめ

足先の冷えを中心に、「冷え」という現象そのものの原因と対策を解説してきました。参考になったでしょうか。

冷えの感じ方には、筋肉量・脂肪量・男女の性差・年齢などによる個人差があるものです。自分が冷えを感じなくても、そばにいる仲間が辛い思いをしていることだってあるかもしれません。「自分が大丈夫だから平気だろう」と思わず、仲間の誰かが冷えを訴えたなら、一緒に休憩するなどの気配りもしたいものですね。

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