今、注目されている女性スノーボーダー、仁井田薫さんに聞く。

インタビュー

2023年3月14日
開田高原マイアスキー場
撮影:眞嶋和隆

仁井田薫(Niida Kaoru)Profile
生年月日:1995年7月10日
出身:秋田県秋田市
身長:160cm
血液型:O型
<資格>
公益社団法人日本プロスキー教師協会 スノーボード ステージⅣ
同 アルペンスキー ステージⅢ

父に憧れ、小学校のときからインストラクターになりたかった

―――まず、生い立ちを教えてください。
出身は秋田県秋田市。平成7年(1995)7月生まれです。育ちもずっと秋田市で、一度大学進学で東京に出ようと思ったことはありましたが、やっぱりスキーやスノーボードをやりたくてずっと秋田にいました。

―――お父さん(※1)は秋田県内のスキー場で、スキースクールの校長をなさっていたそうですね。それで小さいときから滑っていたということですか?
そうです。スキーを始めたのが5歳のとき、スノーボードは9歳からです。当時、父は田沢湖のスキー場でコーチをしていて、私も初めてのスキーやスノーボードは、その田沢湖のスキー場でやりました。

―――競技経験などについてはどうでしょうか?
中学校の3年間、一応アルペン競技の経験はあります。でも、秋田市の中総体(中学総合体育大会)に出るくらいで、かじる程度でした。どちらかというとテクニカルな方面に興味があって、技術選のほうを頑張りたくて練習していましたね。

―――インストラクターの方向に進もうと思ったのはいつ頃からですか?
指導者になりたいと思ったのはすごく早かったですね。小学校6年生でSAJ(全日本スキー連盟)の1級を取得したんですけれど、もうその頃には父のようなインストラクターになりたいと思っていました。
スノーボードも小学校3年生から始めて、スキーほど上手くは滑れませんでしたが、どちらも楽しかったので、両方のインストラクターになろうという思いは小学生のときからありました。

―――実際にインストラクターとしての活動を始めたのは何歳からですか?
1級を取得したときに、アシスタントということでずっと父のレッスンに付いていました。実質的に活動を始めたのは、高校を卒業して18歳でSIAのステージⅠ(※2)を取得してからです。
(※1)仁井田保さん。SIA公認・大平山スキー場オーパスプロスキースクールで校長を務めていた。2022年6月に急逝
(※2)日本プロスキー教師協会によるスキー指導者としての最初の資格。ステージⅣまでの段階がある

スノーボードは遊びの要素が多く、楽しみの幅が広い

―――スノーボードを始めたとき、滑る比重としてはスキーとスノボ、どちらが多かったですか?
完全にスキーでした。父にも「スキーやれ」って言われていました。でも、隠れてスノーボードをしていました(笑)。

―――今はスノーボードのほうが多い?
そうですね、今はもう8~9割スノーボードになってきています。スキーで滑るのもシーズン中に1週間とか2週間くらい。

―――いつ頃からスノーボード側になっていったのでしょうか?
19歳のときからです。父のスキースクールの隣にスノーボードスクールがあって、そこのインストラクターをしていた方が私の最初の師匠でした。その方にスノーボードのパウダーの滑り方を教えてもらい、それで目覚めたというか。スノーボードの楽しさは幅広いなって思いました。以来、そこからガッツリとスノーボードです。

―――仁井田さんのスノーボートのスタイルは何ですか?
基本的にはテクニカルな分野(※3)になると思います。でも、このところ何でもやりたいという欲求が高くなってきています。
スノーボードはやっぱり遊びの要素が多いので、そういった面ではスキーよりずっと幅広く楽しめると感じています。ですから、グラトリやパウダー、フリーライディングなどもやっていきたい。最近はスピードの速い滑り、キレのある滑りの中に、簡単なトリックを入れたりするようなこともよく行われているので、そんなことも指導の中に生かしていきたいと思っています。
(※3)スノーボードのターン技術の追求。指導者的な方向性

プロスノーボーダーとしてメーカーの仕事にも従事

―――スノーボードをしていて一番楽しいって思うのはどんなときですか? また、スノーボードの魅力はどんなところにあると思いますか?
私、実はいつも楽しいんです。ゲレンデが圧雪整備された朝一に、雲海を見ながらとか、美しい景色を見ながら、そこの景色に飛び込んでいくような感じで滑っていく瞬間っていうのは、やっぱり「生きててよかった!」となりますよね。
あと、一面銀世界のパウダーで、ノートラック(※4)のところを一番にシュプールつけていくのも大好き。とにかく自然の中で自由に滑っているときこそが「幸せだな!」と思う瞬間。それこそがスノーボードの魅力ではないでしょうか。

―――海外で滑ったことはありますか?
はい、あります。18歳のとき、父と一緒にバルディゼールとティーニュ(※5)に行きました。父のスクールが終わってから行ったので、3月の下旬です。
スキーとスノーボードで両方滑ってきました。向こうのゲレンデやコースは、ネットとかロープとかそういう区切りがなくて、大自然の中で滑っている感覚。もう本当に幸せを感じました。あと、ティーニュではスキー場に電車が走っているのにも衝撃を受けました(笑)。

―――今(2023年3月時点)は開田高原マイアスキー場(※6)のスクール(※7)に所属していらっしゃいますね。レッスン以外では、プロスノーボーダーとしてどんな活動をしていますか?
私はアンバサダーという立場で、YONEX(※8)のサポートをいただいています。その活動の一環として今年は韓国に行き、向こうのスノーボーダー、ライダーと交流を深めてきました。また、YONEXのプロモーションビデオの撮影とか、あとは試乗会などでお客様やファンの方に直接アドバイスしたりしています。

(※4)誰も足を踏み入れていない状況のこと
(※5)コース総延長400kmというフランスの巨大なスキーリゾート。1992年、アルベールビルオリンピック開催時の競技会場のひとつ
(※6)開田高原マイアスキー場
(※7)マイアスキーアカデミー
(※8)YONEX SNOWBOADS

物販ほかさまざまな仕事にチャレンジ中

―――スノーシーズン以外では、どんなふうに過ごされていますか?
よく聞かれるんですけれど、個人事業主として物販のお仕事をしています。ウエアに付けるストラップとか、リーシュコードというスノーボードの流れ止めとか、レザー小物入れやマネークリップといった私のオリジナル商品、ホームページで販売させていただいています。
今後は、父が生前やっていたコーヒーの焙煎を販売していくことも計画中です。本当は父から焙煎のやり方を直接学びたかったんですけれど、急死してしまってそれは叶いませんでした。父の味を完全復活するまでにはいかないかもしれませんが、父の想いを繋いでいきたいなっていうのはあります。
ほかにはYONEXさんの夏場の出張としてショップで仕事をしたり、モデル業とかテレビのリポーター、撮影のお仕事もちょこちょこいただいたりしています。

―――では、少し個人的な嗜好について。好きな食べ物は何ですか?
しょっぱいものが好きです。秋田には「ぼだっこ」という、超しょっぱい鮭があるんです。ひとかけらでいくらでもご飯が食べられる。それとお酒がよく合うんです。

―――ほかに何か好きなこと、チャレンジしたいことなどはありますか?
アニメやコミックが好きで、今はバイクのロードレースを題材にした『弱虫ペダル』(※9)にはまっています。私は以前にトライアスロンをやっていたことがあって、ロードバイクも好きなので、オフトレでまたやろうかなと思っています。

―――では、今チャレンジしたいことはそういった自転車、ロードバイク系?
そうですね。ほかにもやりたいことばかり。ゴルフもやりたいし、サーフィンもやりたいし、SAP(スタンドアップパドル)にも興味があります。
私はアウトドアが大好きなので、よく一人でキャンプするんですが、ソロキャンプをしながら日中はSAPをやりたいなって思っています
(※9)自転車のロードレースをテーマにした漫画

スノーボードといえば仁井田薫とイメージされる人間になりたい

―――仁井田さんにレッスンを受けたいという場合、どのように申し込めばいいのでしょうか?
私の個人的なホームページがあって、そこに予約のページがありますので、そちらからご予約をいただいてレッスンするというような形にしています。
このところ新規のお客様が増えているのですが、逆に元々の常連のお客様には「レッスン受けられないよ」と。

―――常連さんの事情はともかく、お客さんが増えるのはいい傾向ですね。
以前、父のことを「伝説のインストラクター」と呼んでいたブログがあったんです。「井田保校長のレッスンは楽しくて、とにかくわかりやすい。受ければみんな絶対うまくなる」って書かれていて、それも私が憧れた父の姿でした。ですから、「レッスン受けたいのに受けられない」という声には、体一つしかなくて申し訳ないという思いはもちろんありますけれど、少し父の姿に近づけているのかなという実感もあります。

―――将来的に、自分はどんな人間になっていたいですか?
「スノーボードといえば仁井田薫」と言われるようになりたいです。「あの人はいつもスノーボードやスキーを楽しそうに滑っている」とか、「年をとってもずっとカオルニイダに習いたい」って思っていただけるような人間像でありたいです。

―――では最後に、この記事を読んでくれている読者にメッセージをお願いします。
はい。スキーやスノーボードなどスノースポーツには危険が伴います。ですから、まずは「安全に楽しんでいただきたい」ということ。
でも、スノースポーツはそれ以上に楽しさ、魅力がたっぷり詰まっているスポーツなんですよね。ですから、もっともっと雪山に足を運んでいただいて、この魅力を味わっていただきたいと思います。特に、スノーボードの技術面では私もいろいろとサポートできると思いますので、「上手になってもっと楽しく滑りたい!」と思っている方はどうぞご連絡ください。お待ちしています!

インタビューを終えて

撮影とインタビューを行った開田高原マイアスキー場はスノーボーダーの比率が高く、上手な人もずいぶん見受けられました。でも、仁井田さんが滑ってくると、スピード、切れ味、安定性など、やっぱりほかの人とは明らかに違います。なるほど、これがデモンストレーターの実力なんだと実感した次第。そして、インタビュー中の受け答えも、仁井田さんはとにかく楽しそう。きっとレッスン中もこんな感じなのでしょう。スノーボード初級レベルの記者としては、ぜひ仁井田さんのレッスンを受けてみたいと思いました。


スクールオフィスの前で同じくコーチの藤井耕司さんとツーショット。藤井さんもSIAのスノーボードデモンストレーターで、仁井田さんの現在の師匠とのこと

仁井田薫さんの活動をもっと知りたい方はコチラ↓
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