スキー場では、スキー・スノボによる外傷に注意が必要

スキー 事故防止

スキー・スノボ豆知識

スキーやスノボでは、あまりにも面白くて夢中になりすぎるあまり、怪我をしても気づかないことがあります。痛いのでよく見ると打撲だったり、中には骨折しているケースもあります。スキー場での外傷には色々ありますが、それらの原因を良く知り、できるだけ怪我をしないようにするとともに、怪我してしまった時の対処法についても知っておくようにしましょう。

スキー・スノボでの怪我

スキー 怪我
スキー場での外傷にはいろいろあります。まず、軽傷なら捻挫・打撲ですが、これが重症になると死に至る場合もあります。
外傷の原因としては、スキー、スノボ、そりなどが挙げられますが、この中でスノボでの外傷は約60パーセント、スキーが約40パーセントとなっています。つまり大部分がスキーとスノボによる外傷ということになります。

主な原因

・転倒
外傷で最も多い原因が、転倒によるものです。これが外傷の約80パーセントと一番多く、大部分がバランスを崩して倒れたことによります。そして多くは自分で転んだことが原因となっています。また、ジャンプをしたり、トリックの失敗による転倒も多く、これらの転倒はスキーよりもスノボの方が多くなっています。

・衝突
転倒の次に多いのが衝突です。これはほとんどの場合、他人と接触あるいは衝突によって起こる事故です。人によっては木にぶつかって怪我をすることもあります。

骨折

骨折は、外力の作用した部分の違いで、直達骨折と介達骨折の2つに分かれます。
・直達骨折
これは外から加わった力が、そのままその部位に骨折を引き起こすもので、直接的に加わった力によって骨折した場合をこう言います。木や石にぶつかって、その部分が骨折したりするのがこれです。

・介達骨折
外から加わった力が、その部分に骨折を引き起こすのではなく、そこから少し離れた場所が骨折することを介達骨折と言います。

怪我はどうして起きるのか

怪我や骨折はそのほとんどが転倒によって引き起こされますが、それではなぜ転倒してしまうのでしょうか。
これは大抵がスピードの出しすぎによることが多いです。

自動車事故を思い起こせば良く理解できますが、自分の能力以上のスピードを出すことにより、そのスピードをコントロールできなくなるのです。
曲がるべきところで曲がることができずに、立木や人間にぶつかってしまいます。あるいは自分で転倒してしまうこともあります。

その証拠に、中・上級者に怪我が多く、以外にもビギナーや初心者には少ない傾向があります。初心者の多くは自己転倒によるものであり、中・上級者は他の物体との衝突が多くなっています。

スキーとスノボのどちらが怪我をしやすいの?

スキー 応急処置
スキーとスノボによるスキー場での怪我については、毎年「全国スキー安全対策協議会」が統計を出していますが、それによると2018年から2019年の統計結果では、スキーでの受傷率は44パーセント、スノボでの受傷率は56パーセントとスノボの方が若干受傷率が高くなっています。

それではなぜ、スノボの方が多いのでしょうか。
それは年齢層が、スキーに比べると若い人が多いことが挙げられます。このスポーツは近年人気が高まっており、どうしても年齢層が若くなっています。そのため、体力や身体能力面で優れている若者が、その若さに任せて無理な滑りをしてしまうことがあります。

スノボはバランス感覚を楽しむものであり、ジャンプなど自由なスタイルで滑ることができます。そのためについスピードを出しすぎたり、あるいは難しいコースに行ってみたり、トリッキーな滑りをしたくなります。それが転倒に繋がり、怪我をすることが多くなってしまう原因となります。
つまり、このスポーツ自体が元々怪我をしやすいスポーツだということもいえます。その上、スキーに比べてボードが外れにくくなっており、転倒した時に足に負担がかかり、それが捻挫などを引き起こしています。

怪我をする部位について

スキー 靭帯
スキー場では、身体のどの部分にどんな怪我をすることが多いのでしょうか。

スキーは、靴とビンディング、そしてスキー板が一体化されており、転倒した時にビンディングが開かずに、その力が膝や足などに加わることにより怪我を引き起こします。それゆえにスキーによる膝の怪我の多くは捻挫です。
特に内側側副靱帯を傷めることが多くなります。膝を内側にひねるように転倒すると、この内側側副靱帯が伸びきって傷めてしまうのです。

また、大腿骨と脛骨の間にはたくさんの靱帯が存在します。転倒によって無理な力がかかると、これらの靭帯が傷つくことになるのです。また、膝を使いすぎているために起こるものもあります。これをオーバーユースといい、腸脛靱帯炎、膝蓋腱炎などがあります。

スキーによる肩の怪我は、転倒時に上腕部が引っ張られることによって起こります。また、その約半分が脱臼です。上腕部が前の方に脱臼し、治療後にも安静が必要になります。
スノボも同様に、脱臼が半分以上を占めます。転倒した時にボードが外れず、そのまま斜面に流されてしまうことが関係しています。

頭部

スノボの外傷は上半身に多いのですが、その中で頭部は約10パーセントを占めます。そしてその頭部の場合、約90パーセントが打撲と切挫創になります。これは転倒してもスキーのようにボードが外れずに、前に倒れこんでしまって、かかと側のエッジで頭部を傷つけてしまうことがあるのです。

腰部

滑走中に自分ではさほど気にはならないのですが、実際は腰部にかなりの負担がかかっています。また、十分なウォーミングアップをせずに滑り始めると、それが原因で腰痛を引き起こします。日頃の運動不足などからも起こります。

手首

手首の怪我はスノボで起こりやすくなります。スキーではストックを持っているためにあまり手をついて転倒することがなく、スノボの方が手をつく確率が高くなるためです。そして約70パーセントが骨折で、捻挫は約30パーセントとなっています。

どんな怪我が多いのでしょうか?

怪我
スキー場で怪我をした場合の部位とその種類を紹介します。

スキーは膝を酷使するスポーツです。そのために幾度とない膝の屈伸が知らず知らずのうちに大腿骨の外側にある靱帯が、大腿骨ガイカという骨とこすれ、炎症を起こします。また、膝蓋腱炎というのもあります。これは膝の皿と脛の骨をつなぐ膝蓋腱が炎症を起こすものです。これが重症化すると、ジャンパー膝と呼ばれる膝蓋腱断裂を起こして、腱が切れてしまいます。

膝関節捻挫もあります。これはスキーによるものの中で最も多く、スキー膝とも呼ばれています。スキーでは転倒した際に、スキー板の先端が外側に開いた状態で倒れ、それが原因で膝が外側にひねられてしまいます。スノボでは、ビンディングが外れずに膝をひねることで起こります。この靭帯損傷がより重症化したのが、前十字靱帯断裂です。

そしてジャンプ着地時に傷めるのが、半月板損傷です。着地時に膝関節が曲がったまま回転した場合、膝に負担がかかり、それがもとで半月板を損傷してしまいます。

肩で多いのは脱臼です。転倒した際に、どうしても肩や腕をついてしまいます。その時に肩関節が脱臼してしまうのです。また、脱臼には2つあり、完全にずれてしまったものを完全脱臼と言い、少しずれてまた元に戻るものを不完全脱臼と言います。
肩関節脱臼は転倒した時に後ろに腕をつくことで起こるケースや、手をついたまま後ろに流されてそのまま手が伸びた場合に起こりやすいです。この脱臼を繰り返していると、ちょっとしたことでも脱臼しやすくなってしまうので注意しましょう。

頭部

頭部ではやはり打撲が多いです。頭部を打撲した場合は、脳に影響を与えることもあるので注意が必要です。頭部の打撲のそのほとんどは脳に影響を及ぼさないものであり、開放性外傷と呼ばれる頭皮挫創や皮下血腫になります。頭皮挫創はいわゆる擦り傷や切り傷であり、皮下血腫は内出血を指します。

頭部で気を付けなければならないのが首への影響です。頸椎を傷めることにより手足の麻痺や痛みを発症することがあります。また、脳内出血などの大きな障害に繋がることも多いので、頭部を打撲した時には念のため病院を受診しましょう。

腰の場合は、腰椎分離症や腰椎すべり症といったものがあります。腰椎分離症は、腰の骨の一部に過度なストレスがかかることが原因で疲労骨折してしまうものです、腰椎すべり症は、骨の並びがずれてしまったもののことです。

手首

スノボで転倒するとどうしても手を地面についてしまいます。そのことで手首を捻挫したり、最悪の場合は骨折に至ります。手が地面についた際、手の甲側に必要以上に動くと、手首の中にある舟状骨という小さな骨が骨折してしまうことがあるのです。

怪我をしないための方法

スキー けが防止
スキー場での怪我は、それぞれに原因があり、それを防ぐための方法もあります。それらを知ることで、できる限り回避するようにしなければなりません。

スクールに入る

初心者にとっては、何もかもが新しい世界です。当然、滑ることもできなければ、上手に転ぶこともできません。滑ることと同様に大切なのは止まることや転ぶことであり、これらのことを総合的に教えてくれるのがスクールです。
独学で学ぶことの何がいけないかというと、まず、正しい滑り方ができない可能性があります。その結果、それが事故に繋がってしまうのです。また、独学や友人に教わった場合、転ぶことも多く、痛い思いや怖い思いをすることが多々あります。スクールなら衝突の回避の仕方や、上手な転び方を教えてくれます。

無理をしない

無理をすることで発生する事故も多くあります。自分の実力以上にスピードを出したりすると、ボードのコントロールが効かなくなり、立木などへの衝突の危険性が高まります。また、ジャンプやトリックなどもそうです。きちんとマスターしていないのに、無理にしようとすると必ず事故が起こりますので気を付けましょう。

用具やウェアは自分に合ったものを選ぶ

初心者には初心者用の用具があります。自分が使用するものは自分の身の丈に合ったものを選ぶべきです。特に用具は自分の滑りを決める大切なものですから、自分のレベルに応じたものを選ぶことが事故を回避することに繋がります。

ヘルメットやプロテクターの着用

頭部の外傷は大事故に繋がります。ですから、できるだけヘルメットは被りましょう。アイスバーンなどで頭を打てば、それこそ大事故の元です。初心者はもちろんのこと、たとえ中上級者であっても、ヘルメットは被ることが大切です。

日本でのヘルメット着用率はスキーで約36パーセント、スノボで約16パーセントと言われ、ヘルメットを着用することが格好悪いことのように思われています。しかし、自分で転倒して頭を打つことも多く、事故に繋がらないためにもヘルメットは着用すべきなのです。
これと同様のことがプロテクターにも言えます。特にお尻をぶつけることも多くなりますから、ケツパッドはヘルメットと同様に必需品でしょう。

怪我への対処法

スキー 安全確認

スキー場での怪我には、自分が負った場合と他人が負った場合の2通りが考えられますが、それぞれに対処法は異なってきます。

自分が怪我をした場合

もし意識があるのならば、できるだけ自分で対処します。

・安全確認
まず最初にすべきことが安全確認です。コース途中で起きた場合は、そのコース上では多くの人が滑っているはずです。そこでぐずぐずしていたり周りを確認しないでいると、思わぬ二次災害に襲われます。まずは周りに滑っている人がいないかどうかを確認しながら、速やかにコース端に移動します。

・状況の確認
コース端に移動して安全を確保したら自分の状態を診ます。どこを打ったのか、単なる打撲なのか、骨折しているのか。あるいは出血しているのならその状態もよく確認します。

・症状によってはパトロールに申告する
打撲程度ならそれ以上に騒ぐことはないのですが、もし、それが頭部だったりした場合や、痛みの程度によっては骨折などの重症のこともありますので、少しでもおかしいと思ったら迷わずパトロールに申告します。衝突や転倒直後は気持ちが高揚していることもあり、痛みをあまり感じにくくなっていることがあります。たとえ単なる打撲だと思っても、しばらくは注意しなくてはなりません。また、パトロールへ伝える項目としては、症状だけではなく、いつ、どこで、だれが、どうしたということも伝えると良いでしょう。

他人の怪我

他人の場合は、自分も事故当事者の場合と、単にその場に居合わせた場合があります。

・安全確認
いずれにせよ、安全確認が第一です。自分の時と同様に安全確認をして動けるようならコース端に移動させます。

・周囲への助力要請と状態の確認
他人の場合は、周りの人に助力をお願いすることが必要です。決して自分だけで解決しようとしない方が良いです。周りの人と協力して処置に当たります。この場合も状態を確認します。また、重傷の場合は、役割を分担して事に当たりましょう。そして、怪我人は動揺していますので、決して一人にしないことが重要です。

・意識の確認
頭を打ったりしている場合、重症のことがあります。意識がしっかりしているかどうか、しゃべり方におかしな点がないかを確認しておきます。

・パトロールに状況を伝える
パトロールを呼んだ場合は、今までの状況を的確に伝えます。どんな状態か、どんな処置をしたかまできちんと伝えれば、その後の処置が早くなります。

万が一のために保険に入っておく

スキー場での事故は、自分だけではなく他人を巻き込むことも多いです。それゆえに万が一のことを考えれば、保険に入っておくべきでしょう。スキーなどの保険では、自己転倒による事故、あるいは他者との衝突による事故だけではなく、ボードの盗難や破損にも対応しています。

また、遭難した場合などの救援費用や、衝突事故によって他人に怪我を負わせてしまった場合の示談交渉までカバーされているものもあります。
いつどこで誰に起こるかわからないのが事故です。ましてやスキー場では事故と隣り合わせということもいえますので、できるだけ保険に入ってから出かけた方が安心です。

まとめ

スキー場での事故には、さまざまな原因があり、種類も命にかかわるような大きなものから軽傷まで色々あります。事故はできるだけ起こさないに越したことはありませんが、ゲレンデには他人もいる以上、どうしても衝突を避けられないこともあります。だからこそ、なぜ怪我が起こるのか、起こってしまったらどうすべきかをよく理解しておく必要があるでしょう。

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