安全にゲレンデアクセスするために、雪道運転で確認したい5ポイント

コラム

チェーン? それともスタッドレス? アナタならどちらを選ぶ?

雪国に住んでいる人なら、冬になればスタッドレスタイヤにはき替えるのが当たり前かもしれません。しかし、年に数回しか雪が降らない地域のクルマにスタッドレスタイヤを4本装着するのは、コスト的にも大きな負担となるでしょう。

スタッドレスタイヤにはき替えるか、雪道運転のときにチェーンを装着するか、なかなか難しい選択ですが、まずはそれぞれの長所と短所を見てみましょう。

●チェーン
【長所】
価格が安い
普段は通常のタイヤを使える
シーズンごとにタイヤを保管する必要がない

【短所】
装着が面倒
スピードがあまり出せない
原則として積雪路以外では使用できない

●スタッドレスタイヤ:
【長所】
積雪路でも普通の道(ドライ路面)でも使用できる
いちいち交換しなくてよい

【短所】
導入コストが高い
一般のタイヤに比べて減りがやや早い
シーズンごとにタイヤを保管する必要がある

どうでしょう? 価格などの問題を除けばスタッドレスタイヤのほうが有利に思えますね。
ただ、最近のチェーンは昔のように金属ではなく、硬いゴムなどに特殊素材のピンを打ったものが主流になっていて、装着も簡単になりました。

走行時の振動も少なくなっています。シーズン中に3~5回程度しかスキー場に行かない人なら、無理にスタッドレスタイヤにはき替えるのではなく、最新の高性能チェーンを買ったほうがよいかもしれません。

一方で、毎週のようにスキー場に行くという人なら、総合的に考えてスタッドレスタイヤを選択すべきでしょう。寒いなかでチェーンを装着する手間も省け、アクセス時間も短縮できるので、結果的に疲労感も少ないはずです。

ただし、スタッドレスタイヤがいくら優れているといっても、ガチガチに凍結したアイスバーンではグリップ力が落ちてしまいます。また、水分を多く含んだ雪には弱い傾向があるので、スキー場に行く際には、チェーンも携行しておくのがベストですね。

人工雪のスキー場などで道中に雪がないというケースもありますが、山の天候は変わりやすいもの。いつ雪が降っても大丈夫なように、備えだけは万全にしておきたいものです。
スタッドレス以外の冬用タイヤも存在しますが、雪道での性能の限界が比較的低く、スキー場へのアクセスには適しません。

現在は、取り付けが簡単で走行音も静かな樹脂製の高性能なチェーンが多く出回っている

過信は禁物。4WDだからといって雪道万能じゃない!

4つのタイヤすべてが駆動する4WD車(4輪駆動車)は、荒れた路面や滑りやすい路面で優れた走行性能を発揮します。かつては、燃費が悪い、曲がりにくいなどの欠点も指摘されたことがありましたが、現在では普通乗用車(2WD:2輪駆動)と差はありません。

しかし、4WD車といえども万能というわけではありません。たとえば山道の下りなどでは、走行性能は通常のクルマと大きく変わりませんし、4WDだからといってカーブを高速で通過できるわけでもありません。基本的に4WDが有利となるのは、発進時や坂道の登りなどにおいてです。

もしスキー場までの登り道が渋滞していて、停止、発進を繰り返すような状況だったら、間違いなく4WDのほうが心強いでしょう。4つのタイヤでしっかりと路面を捉えて、スリップすることなく発進できます。また、駐車場に停めている間に大雪が降ってしまったというような場合も、4WDならクルマの前を除雪する程度で脱出できてしまいます。

ただし、注意したいのは、4WDは「万能じゃない」ということ。確かに2WDに比べて走破性が高いのは確かですが、それはあくまでも性能が「高い」だけであって、どんな道でも走れるという意味ではありません。事実、雪道で事故を起こす4WDはけっこう多いようです。

4WDはいったん滑りだすと制御が難しくなることが多く、それが事故の原因になるケースが後を絶たないといいます。クルマの性能を過信して、限界を超えた運転をしてしまっては本末転倒ですよね。また、近年はチェーンやスタッドレスタイヤが高性能になって、道路が圧雪さえされていれば、4WDの必要性を感じることは少ないかもしれません。

どんな駆動方式のクルマでも、タイヤの滑り止めさえしっかりしていれば圧雪路は走りやすい

FR、FF、4WD、それぞれの特性と安心の運転術を知ろう!

クルマには「駆動輪」というものがあります。エンジンからの力が伝わっているタイヤのことで、前後どちらかの2輪だけに力が伝わっているのが2WD(2輪駆動)、前後両方の4輪に力が伝わっているのが4WD(4輪駆動)です。

2WD にはさらに、FR(後輪駆動)、FF(前輪駆動)の2種類があります。また4WDにも、常に4輪が駆動する「フルタイム方式」と、状況に応じて2輪駆動と4輪駆動が切り替わったり、前後のタイヤの駆動割合が変わったりする「パートタイム方式」の2つがあります。

雪道での走行力の強さは、一般的に4WD>FF>FRの順とされていますが、それぞれに特徴があり、運転時の注意点がありますので、それを見ていきましょう。

●FR(後輪が駆動する)
この方式は、駆動輪である後輪が空転しやすいという特徴があります。とくに登り坂では、FFや4WDに比べて弱く、発進不可能となることもあるので注意が必要でしょう。さらに、滑りやすい路面のカーブでアクセルを踏みすぎると、簡単にスピンしてしまいます。カーブの手前で十分にスピードを落とし、カーブの途中ではアクセルを踏み込まずにハンドル操作だけで走り抜けるのがセオリーです。

●FF(前輪が駆動する)
FF車は直進安定性に優れていますので、真っ直ぐ走っている分には雪道でも不安はありません。しかし、カーブでは、クルマが外側に流れようとする「アンダーステア」という欠点があるので注意が必要です。カーブに入る前にスピードを落とし、ゆっくりと曲がりながらカーブ出口にかけてアクセルをゆっくりと踏むようにしましょう。

●4WD(4輪すべてが駆動する)
すべてのタイヤで路面をグリップするため滑りやすい路面でも安定していますが、いったん滑りだすと車体制御が困難になってしまいます。特にフルタイム方式の場合に見られる特徴です。またSUVなどの4WD車は重量があるために、ブレーキをかけてから止まるまでの距離が長くなることもあります。4WDだからといってスピードを出さず、慎重に運転することが最大のポイントです。

どの駆動方式でも、急ハンドルや急ブレーキ、急アクセルなど、「急」のつく操作は厳禁。停止する場合は、早めのタイミングでゆっくりとしたブレーキ操作を行い、発進時もゆっくりとアクセルを踏むようにしましょう。

また、昼間でもヘッドライトもしくはフォグランプを点灯させ、周囲に自分のクルマの存在を知らせて事故防止につなげることも重要です。

雪道で「急」のつく操作は禁物。また昼間でもライトを点灯するなど自車をアピールすることが事故防止にもつながる

スキーにスノボ、ウエアetc…。たくさんの荷物を詰め込むには

スキーやスノボをルーフキャリアに積むときは、ロック機構のチェックをしっかりと行い、決められた積載台数を守って積みましょう。シーズン中、キャリアやルーフボックスを付けっ放しという人も多いと思いますが、固定部分に緩みがないかなど、毎回確認する必要があります。また、ブーツをスキーやスノボに取り付けたままキャリアに積むのは絶対にNGです。走行中に外れると、大きな事故の原因にもなります。

車内にスキーやスノボを積む場合、ステーションワゴンやワンボックスカーならばスペースに余裕がありますが、一般乗用車だとラゲッジスペースに収まらず、助手席に載せたりセンターコンソールの上に載せたりする人がいるかと思います。

しかし、これはとても危険。万一事故を起こしたときに、車内のスキーやスノボが暴れ、身体に接触して大きな怪我につながるケースがあるからです。やむを得ず車内に載せる場合は、スキーやスノボが動かないように、しっかりと固定しておきましょう。

スペースに余裕があるRV車は別にして、クルマのラゲッジルームはスキーやスノボを積むようには設計されていないことを踏まえておきましょう。

スキーやスノボの積載にルーフキャリアは便利。ただし、脱落しないようしっかり固定されているかのチェックは必須

スノードライブでアクシデントにあってしまったら…の解決法!

スノードライブでは思わぬアクシデントが起こりがち。そうならないために、また困ったときの解決法をいくつか伝授しましょう。

●スキー場で駐車するときのポイント
長時間走行し、駐車した直後のクルマは熱を持っています。そこに積もった雪が解け、さらに凍りつくと、次に発進するときにトラブルにつながります。

サイドブレーキはかけず、AT車はパーキングポジションで、MT車の場合はギアをバックか1速に入れて駐車。これはサイドブレーキが凍りつかないようにするためです。

また、ワイパーのゴムがフロントウインドウに凍りついてしまうことを避けるため、駐車時にはワイパーは立てておきましょう。

●フロントガラスが凍ってしまった!
市販の解氷スプレーなどを携行していれば、それを使います。「お湯をかければいいのでは?」という声も聞こえてきそうですが、実はこれはNG。急激な温度変化でガラスが膨張して破損の恐れがあるからです。どうしてもというときは、ぬるま湯を少しずつかけましょう。時間があれば、エンジンをかけて車内を暖め、その熱で溶かすのが一番安全です。

●雪道で立ち往生たとき、どうやって脱出する?
雪道にクルマがはまってしまった場合、アクセルを強く踏むとタイヤは空転し、ますます雪に埋まってしまいます。AT車の場合は、アクセルを踏まずにクリープ現象(アクセルを離すと自然にクルマが進むこと)を利用したほうがうまくいくケースもあるので覚えておくとよいでしょう。

MT車の場合は、1速ではなく2速を使ってゆっくり発進すると抜け出せる可能性が高くなります。いずれにしても、タイヤが空転し始めたら脱出は難しくなります。そんなときは前進と後退を繰り返しながら雪面をならし、反動を使うようにするとよいでしょう。それでも脱出できない場合は、タイヤの下にタオルを敷いたりして摩擦力を高める工夫をし、同乗者に後ろから押してもらいます。

●不幸にも事故を起こしてしまったときの注意
事故直後は気が動転していて、冷静な判断ができなくなっているもの。まずは落ち着いて、「自分と同乗者に怪我はないか?」「クルマの状態はどうなっているか?」を確認します。エンジンがかかっていたら、切っておきます。車外に出るときは、別の車がスリップして二重事故となる可能性などを考えて、慎重に行動しましょう。

また相手のある事故の場合は、警察への連絡は必須。その場の判断で示談などにして、あとで後悔するケースが多いといいます。警察官が到着するまでに、お互いに運転免許証を確認し、連絡先を交換しておきましょう。大きな怪我があった場合は、救急車を手配する必要も出てきます。警察官に交通事故証明を出してもらわないと、自動車保険の保険金が支払われないこともあります。

●緊急時の通報は?
原則的には、その地域の警察に通報します。ただし、道路損傷や落下物の発見などでは、道路緊急ダイヤル「#9910」へ連絡します。また単独での車両故障や脱出不可能な立ち往生などに備え、JAF(日本自動車連盟)に加入しておくと安心です。

あるいは、自動車保険にロードサービスの契約があれば、対応してくれることもあります。
雪道でのアクシデントを防ぐには多くのポイントがありますが、慎重の上にも慎重な運転が必須となることを忘れずにいたいものです。

大雪の後の脱出は大変。スコップ、ウインドウの氷を剥ぐスクレイパー、また雪中作業しやすいよう長靴などは必須の装備

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